なぜ患者様の「本音」が聞けないのか
歯科カウンセリングの場で、
- 「特に問題ありません」
- 「大丈夫です」
- 「先生にお任せします」
といった返答を、患者様から受け取ることは少なくありません。一見するとスムーズなコミュニケーションに見えますが、実は本音が表に出ていない状態であることも多いのが現実です。
患者様は、
- 遠慮している
- 忙しそうで聞きづらい
- 何を聞いていいか分からない
といった理由から、本当の不安や希望を口にできていないことがあります。
そこで重要になるのが、質問型カウンセリングです。特に、「はい・いいえ」で終わらない質問設計は、患者様の本音を引き出すための大きな鍵となります。
質問型歯科カウンセリングとは?
質問型歯科カウンセリングとは、説明や提案を一方的に行うのではなく、質問を通して患者様自身の考え・感情・価値観を引き出す対話型のコミュニケーション手法です。
目的は、
- 患者様の不安や希望を明確にする
- 治療への納得度を高める
- 信頼関係を深める
ことにあります。
特に歯科医療では、治療内容が分かりにくく不安を感じやすいため、質問型のアプローチが非常に効果的です。
「はい・いいえ」で終わる質問の限界
例えば、次のような質問はどうでしょうか。
- 「痛みはありますか?」
- 「不安はありませんか?」
- 「この治療で大丈夫ですか?」
これらは一見、患者様を気遣っているように見えますが、答えは「はい」か「いいえ」で終わってしまいます。
その結果、
- 会話が広がらない
- 患者様の背景が見えない
- 本音を引き出せない
という状況になりやすいのです。
本音を引き出す質問設計の基本① オープンクエスチョン
本音を引き出すために欠かせないのが、オープンクエスチョンです。
オープンクエスチョンとは、
「はい・いいえ」で答えられない質問のこと。
例:
- 「どんなときに痛みを感じますか?」
- 「治療について、どんな点が一番不安ですか?」
- 「過去の歯科治療で、嫌だったことはありますか?」
このような質問を使うことで、患者様は自分の言葉で話すようになり、自然と本音が出やすくなります。
本音を引き出す質問設計の基本② 感情にフォーカスする
患者様の本音は、「事実」よりも感情の中に隠れています。
例えば、
- 「むし歯があります」ではなく
- 「むし歯と聞いて、どう感じましたか?」
と質問を変えるだけで、患者様の反応は大きく変わります。
感情に焦点を当てた質問例:
- 「治療の説明を聞いて、率直にどう思われましたか?」
- 「一番心配に感じていることは何でしょうか?」
- 「もし不安があるとしたら、どんな点でしょうか?」
患者様は「気持ちを聞いてもらえている」と感じ、安心して話せるようになります。
本音を引き出す質問設計の基本③ 選択肢を広げる聞き方
質問の仕方によっては、患者様の選択肢を狭めてしまうことがあります。
×「この治療でいいですか?」
○「この治療について、どう感じますか?」
×「見た目は気になりませんか?」
○「見た目と機能、どちらをより重視されますか?」
選択肢を広げる質問は、患者様自身が価値観を整理する手助けにもなります。
質問型歯科カウンセリングを成功させるコツ
1. 沈黙を怖がらない
質問のあと、少しの沈黙があっても問題ありません。患者様が考える時間として、静かに待つことも大切です。
2. 否定せず受け止める
患者様の意見に対して、「それは違います」と否定すると、本音は引き出せなくなります。まずは共感を示しましょう。
3. 繰り返し・言い換えで確認する
「つまり、〇〇ということですね」と要約することで、患者様は「理解してもらえた」と感じます。
質問型歯科カウンセリングがもたらすメリット
質問型カウンセリングを取り入れることで、歯科医院には次のようなメリットがあります。
- 患者様満足度の向上
- 不安や不信感の軽減
- クレーム・トラブルの予防
- 治療への納得度アップ
- 自費治療の理解促進
- リコール率・継続通院率の向上
本音を引き出すことは、信頼関係構築の第一歩なのです。
まとめ:質問が変われば、関係性が変わる
質問型歯科カウンセリングは、特別な技術ではありません。
「何を説明するか」ではなく、
「どんな質問をするか」を意識するだけで、患者様との関係性は大きく変わります。
「はい・いいえ」で終わらない質問を一つ増やすこと。
そこから、患者様の本音、信頼、そして長いお付き合いが始まります。
ぜひ、明日の診療から取り入れてみてください。
