なぜ歯科治療は「怖い」と感じられやすいのか

歯科医院に来院される患者様の多くが、少なからず不安や恐怖心を抱えています。
「痛そう」「何をされるか分からない」「過去に嫌な経験がある」――こうした気持ちは、治療の内容以前に、心理的なハードルとなって患者様の心に存在しています。

どれだけ技術力が高くても、不安を抱えたまま治療を受けると、患者様の満足度は高まりません。これからの歯科医院に求められるのは、治療前に不安や恐怖心を丁寧に解消するコミュニケーションです。


患者様の不安・恐怖心の正体とは

患者様が歯科治療に対して感じる不安には、いくつかの共通点があります。

  • 痛みへの恐怖
  • 音やにおいへの嫌悪感
  • 過去の治療での嫌な体験
  • 説明不足による不安
  • 自分の気持ちを分かってもらえないという不信感

これらは、治療が始まってからではなく、治療前の時点ですでに存在しています。だからこそ、最初の関わり方が非常に重要なのです。


不安解消の第一歩は「丁寧なヒアリング」

患者様の不安を解消するために欠かせないのが、治療前のヒアリングです。
特に効果的なのが、質問型歯科カウンセリングを取り入れた対話です。

質問例:

  • 「歯科治療で不安に感じることはありますか?」
  • 「過去の治療で、嫌だった経験はありますか?」
  • 「痛みに対して、どの程度不安を感じますか?」

こうした質問を通じて、患者様は
「不安を話していいんだ」
「分かってもらおうとしてくれている」
と感じるようになります。


「大丈夫ですよ」は逆効果になることも

不安を訴える患者様に対して、
「大丈夫ですよ」
「すぐ終わりますから」
と声をかけてしまうことは少なくありません。

しかし、この言葉は時として、
「不安を軽く扱われた」
「気持ちを分かってもらえなかった」
と感じさせてしまうことがあります。

大切なのは、安心させる前に共感することです。

例:
「それは不安になりますよね」
「以前、つらい思いをされたのですね」

まず気持ちを受け止めることで、患者様の心は少しずつほぐれていきます。


気持ちに寄り添う対話の工夫① 共感と言葉の繰り返し

患者様の言葉をそのまま、あるいは少し言い換えて返すことで、
「理解してもらえている」という安心感が生まれます。

例:
患者様「音が怖くて…」
スタッフ「音が一番不安なのですね」

このシンプルなやり取りだけでも、不安は確実に軽減されます。


気持ちに寄り添う対話の工夫② 選択肢を示す

恐怖心は、「コントロールできない」と感じたときに強くなります。
そこで有効なのが、患者様に選択肢を持ってもらうことです。

例:

  • 「途中で手を挙げていただければ、すぐに止めます」
  • 「今日は無理せず、できるところまでにしましょう」

選べる状況をつくることで、患者様は安心して治療に臨めます。


気持ちに寄り添う対話の工夫③ 治療の見通しを伝える

不安の多くは「先が見えないこと」から生まれます。

  • 今日は何をするのか
  • どのくらい時間がかかるのか
  • 痛みが出やすいポイントはどこか

これらを事前に伝えることで、患者様の心構えができ、恐怖心は大きく和らぎます。


スタッフ全員で取り組むことの重要性

不安解消は、歯科医師一人で完結するものではありません。

  • 受付での声かけ
  • 歯科衛生士の対応
  • 治療中のちょっとした確認

医院全体で「不安に寄り添う姿勢」を共有することで、患者様は一貫した安心感を得ることができます。


不安を解消することがもたらす医院側のメリット

  • 患者様満足度の向上
  • 治療中断・キャンセルの減少
  • クレーム・トラブルの予防
  • 信頼関係の構築
  • リコール率・継続通院率の向上

不安を解消することは、患者様のためだけでなく、医院にとっても大きな価値があります。


まとめ:不安をなくす近道は「寄り添う対話」

歯科治療への不安や恐怖心は、特別なものではありません。
誰もが感じうる、自然な感情です。

だからこそ、
治療前に丁寧にヒアリングし、気持ちに寄り添う対話を行うことが、信頼される歯科医院づくりの第一歩となります。

質問型歯科カウンセリングを通じて、患者様の声に耳を傾ける。
その姿勢が、安心と信頼を生み出します。